品質工学会 ASI賞
2019年 ASI賞
授賞の背景
品質工学会はAmerican Supplier Institute(以下、ASIとする)の協力の元、一般社団法人品質工学会ASI賞を設けている。ASI賞は、前年の品質工学会誌に掲載されたすべての報文(論説、解説、論文、実施報告)の中から、ASI独自の視点で、広く世界に紹介したいと考える報文を選定するものである。2018年の品質工学会誌(Vol.26)に掲載された審査対象報文についてASIにて厳正な審査を行った結果、下記2編に2019年一般社団法人品質工学会ASI賞を授賞することとした。
受賞論文
題 目 | 品質工学とV&V-シミュレーションによるロバスト最適化-(Vol.26 No.3 論説) |
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受賞者 | 沢田龍作( サワダ技研(株) ) |
題 目 | 経営の立場で観る品質工学推進の課題-アンケートの誤圧による分析-(Vol.26 No.4 開発と研究) |
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受賞者 | 近岡 淳*1,齊藤 潔*2,中島建夫*3,笠 俊司*4 ( *1 (有)近岡技術経営研究所 正会員,*2 元 富士ゼロックス(株) 名誉会員,*3 東京電機大学 名誉会員,*4 (株)IHI 正会員 ) |
選定理由
○品質工学とV&V-シミュレーションによるロバスト最適化-(Vol.26 No.3)
技術開発、製品開発の仕事の中でシミュレーションによるロバスト性による最適化が大きなウェイトを持つことは間違いのないところであろう。この論説はシミュレーションの妥当性の検証であるASMEのValidationを紹介するとともに、パラメータ設計の2段階最適化における第1ステップであるロバスト性の最適化ではシミュレーションと真値の関係の傾向さえ合っていれば良しとするが、それを検証することの必要性とその方法を提案している。
自動車のように機能のカップリングを避けられない複雑な多機能システムにおいて、システムからサブシステムへの展開、サブシステムから部品レベルへの展開における各レベルのシミュレーションを如何に評価し、どのようにロバスト性の最適化をしていくのかの研究の必要性を強調している。これはまったく同感である。
○経営の立場で観る品質工学推進の課題-アンケートの誤圧による分析-(Vol.26 No.4)
興味深い事例研究である。日本国内の企業間のバラツキは大きいが、ある程度の共通点が垣間見られる結果となっている。この中で挙げられている「品質工学を目的としない」というアイデアは大変重要と考える。
欧米では DFSS (Design For Six Sigma)という設計開発テーマを進めるためのプロセスに品質工学が組み込まれていて、DFSSにタグチメソッドを応用している。DFSSの最初のステップはテーマ選択である。ここでプロジェクト計画書を作成する。すなわちテーマを進めて成功することを目的としているのである。DFSSの65%は品質工学であるが、その上流である「VOC (Voice of Customer)を元に、どんな機能を・・」と「システム選択のためのアイデア出しを尽きるまでやって、どのような方式で・・」も含まれている。テーマに必要なところを実行していくのである。欧米企業は日本からTQC/TQM を学び、品質やリーンの改善活動の仕組みとしての Six Sigmaを生み出した。DFSSはその設計開発テーマ版である。目的はあくまでもテーマを成功させることにある。
お問合せ
ASI賞に関するお問い合わせは,品質工学会事務局までお願いします。
品質工学会事務局 中山,金野(こんの)
授賞・褒賞