品質工学会 ASI賞
2021年 ASI賞
授賞の背景
品質工学会はAmerican Supplier Institute Inc.(以下、ASIとする)の協力の元,一般社団法人品質工学会ASI賞を設けている。ASI賞は、前年の品質工学会誌に掲載されたすべての報文(論説,解説,論文,実施報告)の中から,ASI独自の視点で,広く世界に紹介したいと考える報文を選定するものである。2020年の品質工学会誌(Vol.28)に掲載された審査対象報文についてASIにて厳正な審査を行った結果,下記報文に2021年一般社団法人品質工学会ASI賞を授賞することとした。
受賞論文
題 目 | 無人化工場を実現するためのJIS Z9090 に基づく計測能力検証と計測信頼性向上活動(Vol.28 No.4 事例研究) |
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受賞者 | 麹谷幸久*,中村高士*,畠山 鎮*(*YKK(株) 正会員) |
選定理由
以下の点において優れていると評価した。
・YKKの創業者の夢である無人化工場を実現に向けて,主要な金型部品の測定の自動化に挑戦したロマンのある活動である。
・ X, Y, Zの次元の真値を信号にするための技術的考察がしっかり行われている。
・最初のL18は作業者の熟練度をノイズにして見事失敗したが,あきらめることなく,もっと広い視野でノイズ因子を考慮してによるノイズの予備実験を行った。そもそも熟練度というノイズは N1=低い出力,N2=高い出力 というノイズになりえない。熟練度というノイズは N1=ばらつき小,N2=バラツキ大 というノイズであり,ロバスト性の最適化には向いていない。L8のノイズの実験は再現性が認められ,この結果から複数のノイズの調合ができた。
・2回目のL18では再現性が認められ,3~5dbの利得をえたところ要求を満たすレベルに改善できた。
・さらにオンライン品質工学による計測器の校正周期,管理限界なども最適化して現行よりも実際的な作業標準に落とし込んだ。オンライン品質工学のフィードバック制御の最適化は,損失関数を利用することでコストと社会的損失の合計を最小化するため,社会に与える損失を考慮している。
・この画像測定器のロバスト性の最適化から得られた技術情報を,他の画像測定器に水平展開することができた。
・計測器メーカーの推奨する管理法を鵜呑みすることなく,データと事実に基づいた自前の管理法を開発した。
・一度,失敗したためにパラメータ設計のもぐらたたきに陥りそうだとあったが,失敗したパラメータ設計から知見を得て挑戦し続けることは決して恥じることではない。
お問合せ
ASI賞に関するお問い合わせは,品質工学会事務局までお願いします。
品質工学会事務局 金野(こんの)
授賞・褒賞