品質工学会 学生賞
2024年 学生賞
授賞の背景
品質工学の持続的な発展を図るには大学など教育機関における品質工学の取り組み活動が重要である。品質工学会学生賞はこの活動を支援し,教育機関における品質工学の存在感を高めるための,優秀な学生の研究に対する賞である。
応募された研究について審査表彰部会にて厳正に審査を実施し,下記の研究を2024年品質工学会学生賞に選定した。
本賞は現時点の成果はもとより今後の研究の深化への期待も込めて評価している。受賞者には,研究をさらに進めてさらに大きな成果を上げることを期待する。あわせて受賞者が将来の品質工学を担う人材となることも期待する。
受賞研究
題 目 | 金属Additive Manufacturingにおけるサポート形状最適化のひずみエネルギー評価に基づく研究 |
受賞者 | 佐藤凜太郎(九州工業大学 情報工学部 知的システム工学科 4年) |
指導教員 | 楢原弘之(九州工業大学大学院 情報工学研究院 教授) |
研究の種類 | 卒業研究 |
受賞研究の概要と審査表彰部会コメント
応募の際に研究概要および審査表彰部会による選定理由を以下に記す。
[研究題目]
金属Additive Manufacturingにおけるサポート形状最適化のひずみエネルギー評価に基づく研究
[研究概要]
金属Additive Manufacturing は専用の金型などを用いずに複雑な形状を製作できるため,多品種少量生産に適した金属加工方法である。金属粉末を敷く工程と粉末をレーザ光で溶融・結合する工程を交互に繰り返して造形を行う。造形時,造形物の支持や変形抑制の目的でサポートが必要となる。造形後にサポートを除去するが,除去が容易でないという課題がある。
本研究ではサポート除去のシミュレーションのひずみエネルギーを用いて,除去が容易となるサポート形状をパラメータ設計により検討した。その結果,曲げによるサポートの除去において制御因子では底面横寸法,底面積,変位の位置がSN 比に大きな影響を与えることが分かった。
[選定理由]
本研究は,金属3Dプリンタ加工物のサポート(支持柱)の形状最適化を目的に,シミュレーションによる直交表実験 → 再現性確認実験,さらにテストピースを用いた結果検証,というパラメータ設計のステップを適切に踏襲して歪エネルギーを特性値とする設計評価の有用性を検討している点を高く評価した。
授賞審議において,サポート形状最適化というテーマの背景と価値(サポート構造を必須とする加工物の特徴,サポート構造の除去作業を容易化することの技術的および社会的価値),実物モデルに対するシミュレーションモデルの再現性問題に対する論述不足を指摘する意見もあったが,いずれも今後の研究の深堀に対する期待の表れである。受賞者は大学院に進学予定とのことであり,進学後も引き続き品質工学を効果的に活用しつつ専門研究に邁進されることを期待する。
お問合せ
学生賞に関するお問い合わせは,品質工学会事務局までお願いします。
品質工学会事務局 金野(こんの)
授賞・褒賞