第9回 品質工学技術戦略研究発表大会(RQES2016)

品質工学に何を求めるか -トヨタ自動車 パワートレーンカンパニーの場合-

 第9回品質工学技術戦略研究発表大会は盛会のうちに終了しました。開催にご協力いただきましたトヨタ自動車パワートレーンカンパニーの皆様に,感謝申し上げます。

開催概要

 第9回品質工学技術戦略研究発表大会(RQES2016)を下記の通り開催します。
 技術戦略研究発表大会では,田口玄一名誉会長から提起された「品質工学とは何か」という根本課題に立ち戻り,技術戦略としての品質工学の展開を目指しています。その中で,田口玄一の思考プロセスの解明,学会での品質工学研究の特質,新たな分野での研究開発の提案などが発表され,議論を進めてきました。
 今年は,トヨタ自動車(株)の品質工学の展開を議論します。これまで,マツダ(株)が生産技術,日産自動車(株)が自動車の車体設計に品質工 学を活用した技術開発を展開しました。いよいよ,田口玄一が実験計画法を企業内で最初に講義したトヨタ自動車(株)が,動力駆動源のエンジン開発に品質工学を活用して成果を挙げています。トヨタ自動車(株)パワートレーンカンパニーの技術開発の取組みに焦点をあて,どのような戦略で活動してきたかを探ります。
 答を他者に求めるのではなく,議論の中で答を探り,学会として視点を共有しようとする会員の皆さんの積極的な参加と議論をお待ちしています。

テーマ 品質工学に何を求めるか -トヨタ自動車(株)パワートレーンカンパニーの場合-
日 時 2016年11月18日(金) 10:00 ~ 17:00 (受付は9:30より開始)
場 所 星陵會舘ホール [地図](別ウィンドウで開きます)
東京都千代田区永田町2-16-2 TEL:03-3581-5650
参加費 品質工学会員 10,000円,非会員 20,000円(定員400名になり次第,締切ります。)
懇親会 星陵會舘内レストラン シーボニア(定員100名になり次第,締切ります。)
懇親会参加費 7,000円(懇親会のみの参加はできません。)
主 催 品質工学会
 

参加申込

 参加ご希望の方は,直接会場にお越しいただき,受付にてお申込みください。受付が混雑する可能性がありますので,時間に余裕を持ってお越しいただきますようお願いします。(参加申込みのWeb受付は,2016年11月12日をもって終了しました。)

プログラム

プログラムの内容を一部変更しました。[2016.9.15]

10:00 ~ 10:10 開会挨拶
谷本 勲(品質工学会会長)
10:10 ~ 10:50 講演1
 トヨタ自動車と品質工学の関わり
矢野 宏(応用計測研究所(株))
10:50 ~ 11:40 講演2
 トヨタ自動車 パワートレーンカンパニーの取組み
橘鷹伴幸(トヨタ自動車(株))
11:40 ~ 12:20 発表1
 クランクシャフト回りから発生する打音最小化のための設計最適化
 -システムチャートを用いたオフライン計測システムの構築と活用-
◎ 村上伸之(トヨタ自動車(株))
小原圭太,三宅 慧,橘鷹伴幸,増田康祐,山本 毅(トヨタ自動車(株))
景山健太,村松佑樹(愛知製鋼(株))
12:20 ~ 13:20 昼休み
13:20 ~ 14:00 発表2
 エンジンのシリンダーボア形状への影響因子の寄与度評価 第2報
 -箔ひずみゲージを用いたひずみ計測のロバスト性向上-
◎ 森脇康博(トヨタ自動車(株))
村上伸之,橘鷹伴幸(トヨタ自動車(株))
14:00 ~ 14:40 発表3
 設計・製造上の複数要求特性に対するクランクシャフトの物理指標および形状の最適化手法
◎ 三宅 慧(トヨタ自動車(株))
橘鷹伴幸,不破直秀(トヨタ自動車(株))
矢野 宏(応用計測研究所(株))
14:40 ~ 15:20 発表4
 エンジン部品に関する知見抽出のためのバーチャル設計の応用
橘鷹伴幸(トヨタ自動車(株))
15:20 ~ 15:35 休憩
15:35 ~ 16:55 パネルディスカッション「品質工学に何を求めるのか」
矢野 宏(応用計測研究所(株))
パネリスト:各研究発表者
16:55 ~ 17:00 閉会挨拶
17:15 ~ 懇親会 (別途,参加申込みが必要です。)
 

講演概要

講演1 トヨタ自動車と品質工学の関わり

応用計測研究所(株) 矢野 宏

 1970年以来,トヨタ自動車の様々な人々と,技術の在り方について色々議論をし,教えてもらい,技術上の研究で効果を上げることができた。これらの研究成果は,計量研究所(現産業技術総合研究所)で生かすことができた。計量研究所の研究とは,つまるところ,計測の研究というよりは単なるキャリブレーションの作業に過ぎなかった。
 トヨタ自動車の生産現場の計測作業から学ぶことにより,本来あるべき計測技術を構成することができた。これが品質工学を理解するのに役立った。すなわち,1970年代に,かつてトヨタ自動車の計測管理技術を構成した川島吉男氏との交流を行い,1980年代には,トヨタ自動車の生産技術システムの構築に貢献したといわれる松原秀之氏から学ぶことができた。
 2012年12月,トヨタ自動車のエンジン開発のマネジャである沢田龍作,不破直秀が,「このままではトヨタは危ない」と相談があった。利益としては最高な時に,このようなことを考えるとは立派と感心した。こうして,名古屋ミッドランドでマネジャ達との討論となり,新しいメンバーが現れた。これらメンバーとの討論を数回おこなった。この過程を示す。  

講演2 トヨタ自動車(株)パワートレーン開発における取組み

トヨタ自動車(株)  橘鷹伴幸

 これまでの弊社のパワートレーン開発では設計・評価の効率化を狙いに,設計法・評価法・基準などの標準類を構築し成果を挙げてきた。その反面,開発者は部品や関係するシステムの本来果たすべき機能を考えにくくなってきた。特に近年は新技術の導入増加などによるシステムの複雑化が進み,それによる担当業務の細分化によりシステム全体最適を考えにくい状態となりつつある。そこで、開発上流で部品が構成しているシステムを広い視野で俯瞰しシステムの果たすべき機能を考え,全体最適化するプロセスを構築し、開発者の視点を部品単体からシステムへと拡大させ、製品の市場でのロバスト性を確保した開発を目指し推進している。

発表概要

発表1 クランクシャフト周りから発生する打音最小化のための設計最適化

-システムチャートを用いたオフライン計測システムの構築と活用-
トヨタ自動車(株) 村上伸之○,小原圭太,三宅 慧 ,橘鷹伴幸,増田康祐,山本 毅
愛知製鋼(株) 景山健太,村松佑樹

 開発時の機能不全については,原因究明のためのオフライン計測(以下,計測)を立案し,実施する。ここで,経験のない現象については担当者が各自で計測内容を決定し対応する。ここに,人による誤差や「誤り」,「過ち」などの間違いが発生する。その間違いの大半の原因は,「何を測るか」さらには「どう測るか」を,誰が,何時考えてもバラツキ少なく設定可能な「計測のシステム」を構築できていないことが原因であると考えた。本研究では経験のないクランクシャフト周りからの高周波の打音を解析するためにシステムチャートを活用した計測システムの構築から取組みを開始した。その結果,打音への感度の高い特性値を特定できた。さらに,その特性値を利用した解析により,打音低減に有効な制御因子を確認できた。

発表2 エンジンのシリンダーボア変形への影響因子の寄与度評価 第2報

-箔ひずみゲージを用いたひずみ計測のロバスト性向上-
トヨタ自動車(株)   森脇康博○,村上伸之,橘鷹伴幸

 近年,自動車用エンジンは高出力化が進められており同時に燃費向上のために軽量化が進められている。それらによりエンジン実働時のシリンダーボアの変形に対して厳しい環境になっている。シリンダーボア変形は潤滑用オイル消費,ブローバイガス,振動・騒音など多岐機能に影響を及ぼす。そのため,設計初期段階でシリンダーボア変形に影響する特性値とその感度を明確にし,それを踏まえロバストなシリンダーシステムの設計をすることが重要である。
 ところで,従来のシリンダーボアの変位計測手法は実働時の計測が困難である。そのため,変位と密接な関係があり,実働時でも計測が比較的容易なひずみを特性値として計測する。そのため,第1報では品質工学を用いて常温下における外乱に強いひずみ計測システムを構築できた。
 一方,エンジン実働時のひずみ計測ではセンサが高温下にある。そこで,本報ではさらに加温時における外乱に強いひずみ計測システムを構築する。

発表3 設計・製造上の複数要求特性に対するクランクシャフトの物理指標および形状の最適化手法

トヨタ自動車(株)   三宅 慧,橘鷹伴幸,不破直秀
応用計測研究所(株) 矢野 宏

 クランクシャフトには信頼性,静粛性や製造性など複数の成立すべき要求があり,初期設計からそれらをバランス良く成立させる必要がある。本研究では応力,焼付性,打音の低減、鍛造性向上に着目した。応力,焼付性,打音を代表する出力特性値を決定し,形状決定前に梁モデルを用いたクランクシャフトの物理指標による設計手法を確立した。さらに物理指標値と鍛造性をパラメトリック形状モデルで同時成立させる手法も確立した。これにより初期検討時の短期間での複数要求特性の成立を可能にした。

発表4  エンジン部品に関する知見抽出のためのバーチャル設計の応用

トヨタ自動車(株)   橘鷹伴幸

 従来,技術者の頭の中で行われてきた設計の基本構想は特にプロセスを設けることもなく後進へ伝承されてきた。しかし現在のエンジンシステムは複雑化しており数多くの設計知見を会得するのには大変な労力を要する。そこで対象システムに関係する現象のメカニズムとそのつながりを考えシステムチャート化することにより知見を明確にすることを進めているがこれに費やす労力は多大になることが多い。そこでベテラン設計者の持つ設計知見を定量値で容易に抽出し後進が機能を捉えやすくする手法としてバーチャル設計のエンジン部品へ応用を試行し専門家のみが持つ知見を定量的に抽出することができた。さらに妥当な設計をイメージする能力を開発するための思考訓練の効果確認のツールとしての活用を試行した。

パネルディスカッション

「品質工学に何を求めるのか」

司会:矢野 宏
パネルスト:各研究発表者

これまでの開催履歴

大会についてのお問合せ

品質工学技術戦略研究発表大会に関するお問い合わせは, 品質工学会事務局までお願いします
  品質工学会事務局 中山,金野(こんの) 

  ・ TEL (03) 6268-9355  ・FAX (03) 6268-9350