第10回 品質工学技術戦略研究発表大会(RQES2017A)

あらゆる分野に評価でイノベーションを -技術マネジメントに品質工学を-

 第10回品質工学技術戦略研究発表大会は盛会のうちに終了しました。開催にご協力いただきました(株)IHI 航空・宇宙・防衛事業領域の皆様に,感謝申し上げます。
 次回,第11回品質工学技術戦略研究発表大会(RQES2018A)は 2018年11月30日(金) の開催予定です。

開催概要

 第10回品質工学技術戦略研究発表大会(RQES2017A)を下記の通り開催します。品質工学会は創立25周年を迎え,田口玄一名誉会長から提起された「社会の自由の総和の拡大」の実現を目指して,ビジョン30をスタートしました。今大会では「技術マネジメントに品質工学を」とのテーマで議論を進めます。品質工学でいかに技術開発を行うか,さらに,品質工学で確立したコア技術を,いかに企業内で体系化し総合化するかを確認し,議論していきたいと考えます。会員の皆さんの積極的な参加をお待ちしています。

テーマ あらゆる分野に評価でイノベーションを -技術マネジメントに品質工学を-
日 時 2017年11月17日(金) 10:00-17:00(受付は9:30より開始)
場 所 星陵會舘ホール [地図](別ウィンドウで開きます)
東京都千代田区永田町2-16-2 TEL:03-3581-5650
参加費 品質工学会員 10,000円,非会員 20,000円(定員400名になり次第,締切ります。)
懇親会 星陵會舘内レストラン「シーボニア」(定員100名になり次第,締切ります。)
懇親会参加費 7,000円(懇親会のみの参加はできません。)
主 催 一般社団法人 品質工学会
 

参加申込

 参加ご希望の方は,直接会場にお越しいただき,受付にてお申込みください。受付が混雑する可能性がありますので,時間に余裕を持ってお越しいただきますようお願いします。(参加申込みのWeb受付は,2017年11月11日をもって終了しました。)

プログラム

10:00 ~ 10:10 開会の言葉
谷本 勲(品質工学会会長)
10:10 ~ 10:50 基調講演
 ビジョン30に向けた品質工学会の活動
吉澤正孝(クオリティ・ディープ・スマーツ(有組))
10:50 ~ 11:30 研究発表1
 箔ひずみゲージを用いたひずみ計測のロバスト性向上
◎ 森脇康博(トヨタ自動車(株))
村上伸之,橘鷹伴幸(トヨタ自動車(株))
11:30 ~ 12:10 研究発表2
 老舗企業の調査方法に関する研究
◎ 吉原 均(NMS研究会)
矢野 宏(NMS研究会)
12:10 ~ 13:30 昼休み
 -品質工学の活用と成長を目指したIHIの挑戦-
13:30 ~ 14:10 研究発表3
 失敗実験を成功させる“状態の点数付け” -微小径ドリルによる難切材穴あけ加工の最適化の事例より-
高松喜久雄((株)IHI)
14:10 ~ 14:50 研究発表4
 剛から柔へ!エネルギー評価で新たな可能性 -新しい視点によるジェットエンジンの全体構造設計-
◎ 本田達人((株)IHI)
高松喜久雄,近藤洋介,安藤正晴((株)IHI)
14:50 ~ 15:30 品質工学会日本規格協会理事長賞受賞記念講演
 IHIにおける品質工学の活用と技術戦略への展開
◎ 金津和徳((株)IHI)
高松喜久雄,小木曽元一((株)IHI)
15:30 ~ 15:45 休憩
15:45 ~ 16:55 パネル討論「技術マネジメントに品質工学を」
司会:久米原宏之((一財)地域産学官連携ものづくり研究機構)
パネリスト:各発表者
16:55 ~ 17:00 閉会の言葉
17:15 ~ 懇親会 (別途,参加申込みが必要です。)
 

発表概要

[基調講演]
 ビジョン30に向けた品質工学会の活動

吉澤正孝(クオリティ・ディープ・スマーツ(有組))

 品質工学会25周年を迎えたのを機会に,学会としての「理想をめざして 新たな品質工学への道」を定めた。その中で,30周年にむけてビジョン30を制定した。そのための三つの道標を設定し,長期計画として学会の活動の舵を切ることにした。その計画立案の内容を皆で共有化することとする。

[研究発表1]
 箔ひずみゲージを用いたひずみ計測のロバスト性向上

◎ 森脇康博, 村上伸之,橘鷹伴幸(トヨタ自動車(株))

 開発上流において,素性のよい設計を実現するためにはシステムの機能を解明しておくことが必要であるが,機能解明には計測が必要である。システムの機能解明のための計測にばらつきが大きいとシステム出力値の真値が不明確になるため,計測のばらつき低減が必須である。
 本研究においては箔ひずみゲージを用いたひずみ計測システムにおいて,機能ブロック図を活用し影響因子を洗い出し, L36実験により SN比を向上させる制御因子を明確にした。
 また, SN比を向上できた要因を理解するため,標示因子の変動に対する制御因子の要因効果を明らかにする取組を実施し, SN比向上要因の物理的な理解を容易にした。
 さらに動的ひずみ,静的ひずみの計測において,それぞれ適した制御因子の組合せがあることを明らかにし,各種現象の計測において適切なシステム設計の必要性を示唆した。

[研究発表2]
 老舗企業の調査方法に関する研究

◎ 吉原 均, 矢野 宏(NMS研究会)

 我々は日本企業の経営状態を気にしている。これは企業の経営状態がいわゆる景気に反映し,それが我々の生活に影響するからである。また,田口玄一は,予測や診断や判定の必要のない問題のない社会にすることを品質工学の役割とした。社会の構成要素の一つである企業が永続性の高い安定した経営を実現することは,問題のない社会を実現するうえでも重要である。
 日本は,世界的に見ても 100年以上続く老舗企業が最も多く存在する国である。日本の老舗企業の強さを見いだせれば,より多くの企業が永続性の高い経営を実現させることができるようになると考えた。そこで,これまで日本企業の業績研究を上場企業約 2000社のデータを用いて, MTシステムによる老舗企業を単位空間とした検討から企業の特徴を捉えてきた。単位空間とした老舗企業は 110社あるが,それ以外の単位空間とは特徴の異なる老舗企業も 300社以上存在している。これらの老舗企業の強さとは何かを,さらに見出す必要がある。
 そこで,いかなる調査を行えば老舗企業の強さを見いだせるかを議論するために,業種別の視点で老舗企業の特徴を整理して,各業種の代表的な老舗企業を解析した内容を報告することとする。

[研究発表3]
 失敗実験を成功させる“状態の点数付け” -微小径ドリルによる難切材穴あけ加工の最適化の事例より-

高松喜久雄((株)IHI)

 生産技術分野において,数多くのテストピースや実物を用いた実験によるパラメータ設計が実施されている。一方で,様々な理由から一部の実験でデータが欠測してしまうという問題が稀に発生する。これに対して,欠測データがあった場合においても少しでも再現性のよい評価を行うことが望まれる。そこで,状態の点数付けによる評価を適用した事例として過去に実施した微小径ドリルの難削材穴あけ加工の事例を紹介する。また欠測データに対する評価方法の比較や使い分けについて私見を述べたい。

[研究発表4]
 剛から柔へ!エネルギー評価で新たな可能性 -新しい視点によるジェットエンジンの全体構造設計-

◎ 本田達人, 高松喜久雄,近藤洋介,安藤正晴((株)IHI)

 ジェットエンジンの軸振動設計は従来,運用回転数域から危険速度を回避することを要求として設計されてきたが,軸振動による損失エネルギーを最小にするという新しい視点で設計を試行し,従来の設計クリアテリアも満足する新しい設計解を見出すことができた。この研究では,さらにこれを拡張しエンジン性能を最大化するという視点で,エンジンの軸振動設計だけでなく剛性設計も含めた全体構造設計を試行したので,その結果を報告する。

[品質工学会日本規格協会理事長賞受賞記念講演]
 IHIにおける品質工学の活用と技術戦略への展開

◎ 金津和徳, 高松喜久雄,小木曽元一((株)IHI)

 IHIは技術と人材を重視したものづくり企業である。航空・宇宙・防衛事業領域ではIHI独自技術を活かした高い開発・設計技術力を身に付けるために,1994年に品質工学を導入した。以降,現在まで途切れることなく品質工学の活用を続けてきた。当初は生産技術分野のテストピース実験を中心に活用が進み,切削加工などで代表的な成功事例も出た。その後,生産技術だけでなく,上流の設計分野における活用を拡大することも狙って,2007年からは若手技術者全員への実践教育も実施してきた。しかしながら,教育の成果が品質工学の手法の理解にとどまり,その本質を十分に理解するまでには至らぬものが少なくないのも事実である。IHIの取り組みを例に,品質工学を企業の技術力向上と事業の成功に直結させるためには,普段の技術者自身の仕事と品質工学をどう結び付けていくのかについて議論したい。
 

パネル討論

テーマ「技術マネジメントに品質工学を」

司会:久米原宏之( (一財)地域産学官連携ものづくり研究機構

 1993年に発足した品質工学会が昨年(2016年)一般社団法人となり谷本会長のもと新たな陣容で学会活動が始まり,第10回技術戦略研究発表大会を迎え,これまで数々の成果を積み上げてきた学会の進展を図ろうとしている。2015年の第8回では「品質工学の果たすべき役割を探る -ここまで拡大した品質工学-」,昨年(2016年)の第9回では「品質工学に何を求めるか -トヨタ自動車(株) パワートレーンカンパニーの場合-」と事例展開の中から多角的戦略的テーマや技術マネジメントを考察してきたが,今回は品質工学会としてビジョン30に向けた「あらゆる分野に評価でイノベーションを -技術マネジメントに品質工学を-」と品質工学の原点にさかのぼり,学会のマネジメントの観点から将来に向けた体制作りを機能展開のもとに積極的に戦略を図る取り組み内容が発表される。当日の研究発表の内容と併せてパネル討論を活発にしていただければ幸いです。

これまでの開催履歴

大会についてのお問合せ

品質工学技術戦略研究発表大会に関するお問い合わせは, 品質工学会事務局までお願いします
  品質工学会事務局 中山,金野(こんの) 

  ・ TEL (03) 6268-9355  ・FAX (03) 6268-9350