第13回 品質工学技術戦略研究発表大会(RQES2020A)
あらゆる分野に評価でイノベーションを -ITとの結合で進化する品質工学-
第13回品質工学技術戦略研究発表大会は盛会のうちに終了しました。開催にご協力いただきました講演者、発表者の皆様に,そして参加者の皆様に感謝申し上げます。
開催概要
第 13 回品質工学技術戦略研究発表大会を下記の通り開催します。昨年から春と秋の大会を通して同じテーマで議論を深めています。品質工学と IT との結合,さらに他の技法・手法をうまく組み合わせて実践することが有効であることが明らかになってきています。今回は 2 つの取り組みの発表を基に,品質工学の新たな活用方法について討論します。1 つは DFSS と品質工学の結合による新たな技術開発プロセスの構築と実践,もう 1 つはマツダを中心とする広島自動車産業において推進している品質工学の考え方を軸とした機能開発の取り組みです。コロナ禍の中,全面リモートでの開催となりますが,会員の皆様の積極的な参加と討論をお待ちしています。
テーマ | あらゆる分野に評価でイノベーションを -ITとの結合で進化する品質工学- |
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日 時 | 2020年11月27日(金) 10:00-16:30(リモート接続開始は9:30予定) |
リモート通信ソフト | Microsoft Teams |
参加費 | 品質工学会員 10,000円,非会員 20,000円(定員400名になり次第,締切ります。) |
主 催 | 一般社団法人 品質工学会 |
プログラム
10:00 ~ 10:10 | 開会の言葉 |
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椿 広計(品質工学会会長) | |
10:10 ~ 11:05 | 基調講演 欧米におけるDFSS (Design for Six Sigma) 活動 |
田口 伸(品質工学会理事、ASI , Inc.) | |
11:05 ~ 11:45 | 研究発表1 DFSSをベースとした技術開発プロセスの実践 |
細川哲夫〇(品質工学会理事、(株)リコー),渡辺 誠,高内正恵((株)リコー) 成田博和(リコーインダストリアルソリューションズ(株)) |
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11:45 ~ 12:10 | 研究発表2 米国企業のDFSSの事例の紹介 |
田口 伸(品質工学会理事、ASI , Inc.) | |
12:10 ~ 13:30 | 昼休み |
13:30 ~ 13:50 | - 広島地区における品質工学の新展開 - 研究発表3 マツダにおける機能開発の取り組み |
武重伸秀(品質工学会副会長、マツダ(株)) | |
13:50 ~ 14:30 | 研究発表4 マツダのボディー開発部における機能開発の取り組み |
吉村孝史(マツダ(株)) | |
14:30 ~ 15:10 | 招待講演 マツダの取引先における機能開発の取り組み |
吉武晃司((株)キーレックス) | |
15:10 ~ 15:20 | 休憩 |
15:20 ~ 16:20 | パネル討論「日本企業の技術・製品・サービスの開発においてリーダーが考えるべきこと」 |
司会:細川哲夫(品質工学会理事、(株)リコー) パネリスト:各発表者 |
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16:20 ~ 16:30 | 閉会の言葉 |
浜田和孝(品質工学会副会長) |
発表概要
[基調講演]
欧米におけるDFSS (Design for Six Sigma) 活動
1980年代、ジャパンアズ No.1と言われるほど日本企業は成功した。欧米企業は日本企業を調査し学習した。QC七つ道具や実験計画法などの統計的品質管理であるSQC、全社的品質管理TQC/TQM、トヨタ生産方式などを学んだ。そして欧米文化に適応するシックスシグマが登場した。特に90年代のGE社CEOジャックウェルチの成功を経てシックスシグマは世界中に広まっていった。シックスシグマで取り上げられるテーマは効率の悪いシステムを改善したり、不具合を減らして再発防止するということが中心で、日本のQCストーリーのステップに似たDMAICというプロセスでテーマを進めていく。
設計開発のテーマは如何に競争力のある製品やサービスを市場に提供するかというプロアクティブなものでDMAICは馴染まない。2000年ぐらいから設計開発業務のテーマを進めるためにDFSSを導入する欧米企業が出始めた。DFSSのテーマを進めるプロセスにはDMADV、DMEDI、IDOV、IDDOVなど様々なバージョンがあることで混乱を招いているのであるが、ここではASIで開発したIDDOVを紹介する。因みにASIのDFSSの半分は品質工学である。
日本企業が忘れてしまったチームで知恵を絞って良い結果を出すという活動を欧米企業が実践しているので是非参考にしていただきたい。
[研究発表1]
DFSSをベースとした技術開発プロセスの実践
品質工学会と品質管理学会の共同研究会「商品開発プロセス研究会 WG-2」では,技術者の創造性を効果的に引き出す最も優れた技術開発プロセスとして,主に欧米で活用が進んでいるDFSSに注目し,現在のDFSSを超える技術開発プロセスを構築することを目指した研究に取り組んでいる.弊社では技術開発を担当する部門のテーマを対象に,WG-2の研究成果をトライアル的に実践し,効果の検証を実施している.その技術開発プロセスは各テーマの目的や状況に応じてWG-2の研究成果を柔軟にアレンジしたものとなっている.以下にその中の1つの事例を示す.
「従来に比べて80%の体積削減を実現した用紙折り機構の技術開発プロセス」
Step.1 お客様の期待を超える重点VOC(Voice of Customer)の決定
Step 2 R-FTAと公理設計で技術的なリスク対象を見える化
Step 3 CAE活用のCS-T法によるリスク対象の改善メカニズム把握と新機構の考案
Step.4 実物試作とロバスト性評価
この事例は既存市場を対象としているのでお客様の要求に関する生の声(RV: Raw Voice)を入手し,RVから潜在ニーズのVOCを掘り起こすことができる.しかしながら,新規技術を利用した製品を新規市場に投入するケースではRVが存在しないため,潜在ニーズのVOCを創造する必要がある.潜在ニーズのVOCの創造は初めての試みであり,現在のところ効果確認までは至っていない.しかしながら,VOCを創造するという従来にない新しい活動に対して,ほとんどの技術者が前向きに取り組んでいることが確認できたことは収穫である.DFSSは左脳と右脳をバランス良く使うプロセスとなっていることを改めて認識できた.当日は最新の状況を報告する.
[研究発表2]
米国企業のDFSSの事例の紹介
2000年からASIがDFSS(Design for Six Sigma)の指導してきた企業でやられたDFSSテーマの中から抜粋して紹介する。2008年に発表された当時ダイムラークライスラー社のDesign for Six Sigma (DFSS) Optimization of Vehicle Offset Crashworthy Design using a Simplified Analysis Modelを紹介する。これはオフセット前面衝突の安全性を確保するためのニューモデルのBody-in-Whiteという車体の骨組みの設計の最適化である。米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)が実施するNCAPという衝突試験に合格しないと車は売ることができない。また高得点であると欧州で5つ星を得られる。骨組み設計の設計概念のアイデア出しのためにPughを実施して設計を3通りに絞り、それぞれの設計概念に対してL54を3回ずつ繰り返して最適化したものである。シミュレーションは一回の衝突が30時間かかる3D-CAEではなく、5分で結果の出るバネ-マスモデルを作成することで実行した。
この事例の他に2~3件の事例の概要も許される範囲で紹介したい。
[研究発表3]
マツダにおける機能開発の取り組み
現在自動車産業はCASEへの対応が必須となっており、開発しなければならない技術が格段に増えている。そのため開発に必要な工数も増加の一途を辿っており、開発効率を飛躍的に高めることが必須の状況となっている。そこでいくつかの対応を実施しているが、その一つが品質工学の考え方を具現化した「機能開発」である。これはSKYACTIV-Gエンジンの開発で実行した方法論であり、大幅な開発効率向上を達成することに成功した。これを車両開発全体に展開することで大幅な開発効率向上を達成したいと考えており、一部共同で技術開発しているサプライヤー殿とも取り組みを開始した。
本報では、その取り組み概要を報告する。
[研究発表4]
マツダのボディー開発部における機能開発の取り組み
マツダのボディー開発部は大幅な開発効率向上を狙いに、品質工学の考え方による「機能開発」に取り組んでいる。ボディーには多くの機能があり、一つのユニットが複数の機能を持つ場合も多い。そして部員はユニット開発を分担しているため、部員同士が機能を同じ目線で見ることができるようになることが重要となる。そこで本活動は全員参加で実施することとし、エネルギーという同じ目線で技術を整理する取り組みを実施した。
その結果“基本機能ではなく品質特性ばかりに取り組んでおり、効率の悪い仕事をしていることに気が付いた”など、自身の仕事のあり方に疑問を持って取り組みを変える社員が出てきつつある。更に一部ではあるが開発効率が上がった事例も出てきている。
本報告では、これまでの取り組みを振り返り、成果と課題を整理する。
[招待講演]
マツダの取引先における機能開発の取り組み
マツダのボディー開発部と共同で、開発効率向上を狙いに「機能開発」に取り組んでいる。今後、継続的にお客様に価値を提供していくには、今後どのように技術を進化させていくかの戦略が必要となる。そこでまず過去からの機能の変遷を整理し、今後必要な機能を考えた。また、現状技術の基本機能と主な品質特性をエネルギーの流れで整理し、基本機能ではなく品質特性に多くの時間を割いていることに気が付くことができた。
未だ取り組みを開始したばかりだが、今後、マツダと共に機能開発に取り組み、開発の効率を高めていきたいと考える。
これまでの開催履歴
研究発表大会 過去のプログラム一覧 |
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大会についてのお問合せ
品質工学技術戦略研究発表大会に関するお問い合わせは, 品質工学会事務局までお願いします。
品質工学会事務局 金野(こんの)