第14回 品質工学技術戦略研究発表大会(RQES2021A)
ITとの結合で進化する品質工学 - 機能性と効率の探求 -
第14回品質工学技術戦略研究発表大会は盛会のうちに終了しました。開催にご協力いただきました講演者、発表者の皆様に,そして参加者の皆様に感謝申し上げます。
開催概要
第14回品質工学技術戦略研究発表大会を下記の通り開催します。デジタル技術の超速の進歩によるモノづくりの革新やモノからコトへの進化、イノベーションの創出などデジタルトランスフォーメーション(DX)が待ったなしに求められています。品質工学がモノづくりの革新に様々な形で貢献できることは数多くの発表事例を通して示されています。今大会では“フロントローディング”をキーワードとして研究発表と討論を行います。デジタル技術と品質工学の結合でフロントローディングがどのように進化してきているのか、より充実させるための課題は何かについて理解を深めたいと思います。また、研究発表に先立ち、経済産業省大臣官房審議官の田中哲也様へ基調講演をお願いしています。コロナ禍の中、全面オンラインでの開催となりますが、会員の皆様の積極的な参加をお待ちしています。
テーマ | ITとの結合で進化する品質工学 -機能性と効率の探求- |
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日 時 | 2021年11月26日(金) 10:00-16:30(リモート接続開始は9:30予定) |
リモート通信ソフト | Microsoft Teams |
参加費 | 品質工学会員 10,000円,非会員 20,000円(定員400名になり次第,締切ります。) |
主 催 | 一般社団法人 品質工学会 |
プログラム
10:00 ~ 10:10 | 開会の言葉 |
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椿 広計(品質工学会会長) | |
10:10 ~ 11:10 | 基調講演 ニューノーマル時代の製造業とイノベーション |
田中 哲也(経済産業省大臣官房審議官(産業技術環境局担当)) | |
11:10 ~ 11:50 | 研究発表1 金属3Dプリンタ開発と品質工学 -新規開発於けるマツウラの取り組みー |
天谷 浩一(㈱松浦機械製作所) | |
11:50 ~ 12:30 | 研究発表2 デジタルSN比を用いた落下衝撃シミュレーションモデルの最適化 |
水野 直樹◯(リコーテクノロジーズ㈱),長谷部 光雄(のっぽ技研),川西 将範(浜松品質工学研究会) | |
12:30 ~ 13:20 | 昼休み |
- フロントローディングへの取り組み - | |
13:20 ~ 14:00 | 研究発表3 自動車産業における開発効率向上の課題と対応 |
武重 伸秀◯(品質工学会副会長,マツダ㈱),吉村 孝史(マツダ㈱) | |
14:00 ~ 14:40 | 研究発表4 フロントローディング設計の展開に向けた品質工学とシミュレーションの融合 |
桑本 護◯,大野 麻波,松田 祐樹(YKKAP㈱),畠山 鎮(YKK㈱) | |
14:40 ~ 15:20 | 研究発表5 燃焼~溶融のCAEによる機能性評価と感度調整による試作レス開発プロセスの確立 |
小西 洋平◯,武村 直輝,齊藤 卓一(㈱ニコン) | |
15:20 ~ 15:30 | 休憩 |
15:30 ~ 16:20 | パネル討論「企業変革に求められる技術者像とIT技術との関わり」 |
司会:細井 光夫(㈱小松製作所) パネリスト:各発表者 |
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16:20 ~ 16:30 | 閉会の言葉 |
浜田和孝(品質工学会副会長) |
発表概要
[基調講演]
ニューノーマル時代の製造業とイノベーション
新型コロナウイルス感染症の感染拡大や、急速に進む地球温暖化に対応するためのカーボンニュートラル・脱炭素社会実現に向けた取組をめぐるグローバル競争の激化など、ここ近年の製造業を取り巻く状況は世界規模で目まぐるしく変化している。
本基調講演では、大きな転換期の真っ只中にある製造業が今まさに直面している現況や課題、動向などについて紹介した後、不確実性の高まりの中で、いかにして日本の製造業がイノベーションを創り出し、スピード感をもってこの変革期を乗り越える勝ち筋を見つけていくかを一人一人に考えていただくための足がかりとして、ITや標準・規格をはじめとした産業技術政策一般における経済産業省の方針やその具体的取組について概説する。
[研究発表1]
金属3Dプリンタ開発と品質工学 -新規開発於けるマツウラの取り組み-
2000年頃よりマツウラは金属 3Ðプリンタ LUMEXの開発を行っている。元々マツウラはマシニングセンタの開発を主としており、 3Dプリンタの開発に必要な要素技術の中にはマシニングセンタの開発で経験した事が無い全く新しい技術開発が多く含まれており、この開発については一からの勉強も含めた開発となった。その開発の中での開発ツールとして中心を担っているのが品質工学である。
全く経験の無い技術開発で何から手を付けてよいか、短時間で開発を行うにはどうしたら良いか。結果、品質工学を取り入れた事がその解決の一助として大きな成果を得られたと考えている。今までに適応した開発の数は 20テーマ近くある。アウトプットとしては技術開発結果だけでは無く、エンジニアの大きな成長も得る事が出来ている。
今回はフロントローディング、若手・中堅エンジニア教育に対する品質工学適用の重要性について具体的な例を挙げながら説明を行う。
[研究発表2]
デジタルSN比を用いた落下衝撃シミュレーションモデルの最適化
OA機器の輸送品質(耐衝撃性、緩衝材の緩衝性など)を作らずに創るために、製品設計・包装設計における落下衝撃シミュレーションの活用を進めている。試作品を作らずに輸送品質を検証するためには、品質改善の方向性を、シミュレーション上でも正しく再現させる(実機と同様の方向性を導き出す)必要がある。
そこで、シミュレーション結果をデジタルSN比によって評価することで、シミュレーションモデル(製品モデルの構成・作り方や、各種解析条件・パラメータ)を最適化することとした。
今回は、デジタルSN比を活用した条件最適化の方法や、その後のシミュレーション実施事例(フロントローディング、包装材縮小化と物流コスト低減)等について、そのプロセスの紹介をする。
[研究発表3]
自動車産業における開発効率向上の課題と対応
世界の産業構造が第二次から第三次に移行する中、自動車産業においてはMaaSによる利益確保が必須であり、これまでの走る、曲がる、止まるのみならず、オフィス空間を提供するなど多くのサービス機能を実現させなければならない状況にある。また、今後も益々少子高齢化により労働力確保が難しいこと、EV化によりコスト競争が加速することなどから、大幅な開発スピードアップと効率向上が必須の状況となっている。そのための最も有効な手段は開発のフロントローディングであり、これをIoTやコンピュータをフル活用して実行する必要がある。ここではこれまでの自動車産業での取り組みを踏まえ、今後の課題と必要な取り組みを整理する。
[研究発表4]
フロントローディング設計の展開に向けた品質工学とシミュレーションの融合
設計を行う際、お客さまの要求に対して検討すべきことが多々あり、その対応で多大なる時間とコストの負担が設計者にかかる。そこで、従来の経験則からの実機による評価ではなく、シミュレーションでの効率的な用法に品質工学を用いた多角的な技術検討を行うことで、出戻りのないフロントローディングの達成を試行することを目的とする。
本実験では、はじめにシミュレーションと実機の試験との整合性の確認を行い、その後誤差因子を直交表L18を用いてシミュレーションによる実験を行った。そこから得た誤差因子の最大値および最小値になる条件で、制御因子の実験を行った。制御因子実験では、直交表L18を3回繰り返し、SN比が高くなる組合せを積み上げることで、より理想の形状に近づくようにした。これは、4,374通り×3回=13,122通りの実験数が検討できたことになる。 最後に、シミュレーションによる実験から得られた最適条件と、実機による実大試験の結果を比較することで、シミュレーションの再現性が確認された。
このことから、シミュレーションの品質工学への利用は技術的課題の達成のみならず、多くのアイデアを短期間で検討できることが実証された。
[研究発表5]
燃焼~溶融のCAEによる機能性評価と感度調整による試作レス開発プロセスの確立
石英ガラス合成は燃焼~溶融といった複雑反応を伴うため、従来は実機試作が必須であった。そのため膨大な開発コストと量産安定性に課題があった。本報では、課題解決のため、試作レス開発プロセスを確立したので報告する。
CAEを用いた二段階設計を実現するため、まずプロセス機能展開によるシステム全体の俯瞰に取り組んだ。プロセス機能展開は机上で複数の技術者により行い、システムの見える化をすることができた。ここから得られた制御因子や誤差因子をCAEを用いて網羅的に評価することで、CAEによる二段階設計を実現した。従来の開発で必要だった実機実験をCAEで代替したことにより、信頼性の高いプロセス条件を短期間で確立することができ、大幅な損失低減を達成した。
これまでの開催履歴
研究発表大会 過去のプログラム一覧 |
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大会についてのお問合せ
品質工学技術戦略研究発表大会に関するお問い合わせは, 品質工学会事務局までお願いします。
品質工学会事務局 金野(こんの)
・mail rqes@office.rqes.or.jp