品質工学会 学生賞

2012年 学生賞

2012年3月13日
品質工学会 審査部会

授賞の背景

 これからの品質工学の持続的な発展を図るには大学など教育機関における品質工学の取り組み活動が重要である。品質工学会学生賞はこの活動を支援し,教育機関における品質工学の存在感を高めるための,優秀な学生の研究に対する賞である。
 応募研究の中から,審査部会にて厳正に審査を実施し,下記1件の研究を選定した。受賞した研究は,学生であることを抜きにして,品質工学の研究として研究テーマと方法,考察など一般会員の平均以上の研究の質である。
 学生賞は,現時点での評価だけでなく,将来の期待を込めて評価している。研究をさらに進め,より大きな成果を上げることを期待する。あわせて,受賞者が将来の品質工学を担う人材となることも期待する。

受賞研究

題 目 品質工学を用いたFDM吐出機構に関する研究
受賞者 下川雄基(学生会員)(九州工業大学大学院 情報工学府 情報創成工学専攻 2年)
指導教員 楢原弘之
研究の種類 卒業研究

研究の概要

 FDM(Fused Deposition Modeling:熱溶解積層法)とは,ワイヤー状の熱可塑性樹脂をプーリーで挟み込み,プーリーを回転させるモータを駆動することで加熱部に送り出し溶解させる。その溶解したワイヤー状の熱可塑性樹脂を吐出し、ステージ上の任意の位置に堆積・固化を繰り返すことで三次元形状を造形する手法である。既存のFDM装置で使用可能な材料はワイヤー状の樹脂に限られている。しかし、射出成形等で一般的に使われているペレット状の樹脂の使用が可能となると,使用可能な樹脂が大幅に増加する。
 本研究では,従来のプーリーを用いた吐出機構ではなく,ペレット状の樹脂の吐出が可能な吐出機構として,スクリューを用いた吐出機構を開発することを最終目標とする。そこで,回転数を信号とし,吐出質量を出力とした動特性のSN比により,スクリューを用いた吐出機構形状の機能性評価を行いベースとなる形状を決定した上で,決定した形状の詳細について,パラメータ設計を行った結果,以下の結論を得た。

  1. 形状2の方が形状1よりSN比が4.1[db]高く,粘度の影響を受けにくい形状であることが分かった。
  2. SN比を算出することで要因効果図から最適条件を検討した結果,形状2の最適な条件が分かった。
  3. 最適条件と比較条件におけるSN比の利得の推定値は5.92[db]で、確認実験の利得は2.67[db]となった。利得の再現性の向上は今後の課題である。

形状1

形状2

お問合せ

学生賞に関するお問い合わせは,品質工学会事務局までお願いします
  品質工学会事務局 中山,金野(こんの) 

  ・ TEL (03) 6268-9355  ・FAX (03) 6268-9350