品質工学会 日本規格協会理事長賞
第8回 品質工学会 日本規格協会理事長賞(2023年)
授賞の背景
[品質工学会日本規格協会理事長賞] は,品質工学に関連して広く日本の標準化活動に貢献すると考えられる成果に対し,一般財団法人日本規格協会より贈呈される賞である。 自薦ないし他薦による応募の中から,品質工学の継続的実践と普及活動をとおして,社会ないしは企業・団体への貢献が認められる個人ないしは組織体に授与するものである。
品質工学会日本規格協会理事長賞の本審査会を2023年1月25日に開催し、下記2名の応募者に対して[第8回品質工学会日本規格協会理事長賞]の授賞を決定した。
受賞者
受賞者 | 角 有司 (宇宙航空研究開発機構 安全・信頼性推進部 正会員) |
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推薦者 | 吉澤正孝 (クオリティ・ディープ・スマーツ有限責任組合) |
受賞者 | 金本良重 (個人 正会員) |
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推薦者 | 嘉指伸一 (嘉指技術品質研究所) |
授賞理由
【授賞の理由 角有司氏】
角氏は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)に所属し、宇宙航空の要件である高安全、高信頼性を担保する品質工学の実践と普及に取り組んでいる。品質工学会での活動は5年余りと短いものの、その中で数多くの事例や案件への参画、発表、論文化を行っている。さらに、各学会との共同研究を通して品質工学をより広い領域で活用し、成果を発表することで品質工学の認知を高めている。外部発信を含め、品質工学の実践研究について積極的かつ幅広く展開する人材は品質工学会において希有な存在である。また、航空宇宙領域の最先端技術に品質工学を活用した意義も大きい。
1) 標準化への直接的な貢献
JAXAの安全性や信頼性分野の設計標準を企画段階からリーディングし標準書を制定した。各国の宇宙航空関連機関におけるパラメータ設計の標準書としては世界初である。
JAXA設計標準 (https//sma.jaxa.jp/TechDoc/):
・JERG-0-060(2021) ロバスト設計ハンドブック(2021年制定)
・JERG-0-060TM001(2021) ロバスト設計の実践事例集(2021年制定)
2) 品質工学会への貢献
JAXAにおいて、品質工学を活用した短期・低コストの機器開発方法の検討をリードした。宇宙航空領域での構造物や装置開発に必須なCAEに品質工学を利用するために、JAXA独自のパラメータ設計支援ツール「Jaxa Integrator for ANalysis Tools(通称JIANT)」を2014年に開発した。宇宙航空分野や一般産業への適用を進めるため、品質工学会との共同研究会を2018年に立ち上げ、品質工学と設計支援ツールの連携を研究した成果を品質工学会や角氏が所属する専門部会で発表した。
品質工学会に対しては、企業交流会のJAXAでの開催(2019)を主導したほか、論文投稿「パラメータ成立範囲によるロバスト設計法と耐震設計への適用(2023)」や、品質工学会技術戦略研究大会「品質工学のJAXA標準書設定の意義と宇宙航空産業における品質工学への期待(2019)」での発表を含む、計11件の大会発表や品質工学会誌への論文投稿を実施している。同氏の活動は高く評価され、発表賞金賞「多様な地震波に対するロバストな木造建築の耐震設計手法の研究(2019)」と貢献賞(2020)受賞に至っている。
3) 周囲(所属組織内外)への貢献
JAXAにおいては、前述のようにパラメータ設計の標準書の制定に貢献した。JAXA外では、日本機械学会、計算工学講演会、宇宙科学技術連合講演会、日本建築学会などへの品質工学関連の論文投稿(2件)、発表(33件)、講演(15件)を行った。
4) 普及(基盤作り)の体制構築と活動
JAXA内では品質工学研修講師と設計標準のロバスト設計WGリーダーとして活動している。また、JAXA外では奈良女子大学など複数の大学や企業への品質工学教育に加え、京都大学など複数の大学との共同研究も行っている。
【授賞の理由 金本良重氏】
金本氏は、論文賞金賞、貢献賞金賞の受賞、品質工学会誌への多数の論文投稿実績に加え、 品質工学フォーラム埼玉の創立メンバー、田口玄一博士創設の品質工学研究会(日本規格協会主催)の幹事長としても活躍し、各研究会員間での品質工学に関する知見の共有・研究の推進、研究結果発表の企画等を通して品質工学の普及に大きく貢献している。
田口玄一博士から直接指導を受けた経験を活かし、品質工学の普及推進活動に継続して取り組む姿勢は学会員の規範となるものであり称賛に値する。
1) 標準化への直接的な貢献
国際標準創成型 研究開発「品質工学による最適化設計・評価技術に関する研究」において、品質工学の方法論のISO規格制定を提案するための規格原案「機能性評価方法通則」を作成した。
2) 品質工学会への貢献
論文掲載6件(1994~2005)、解説掲載3件(1997~1999)、大会発表6件(2001~2007)、の投稿と発表を行い、論文賞金賞「FM変調回路の安定性設計(1999)」、発表賞銀賞「制御システムの最適化設計(1999)」、貢献賞金賞(2005)を受賞している。
さらに、田口語録をまとめた著作「タグチメソッドの源流を探る(2010)」、初心者向けの書籍「早わかりタグチメソッド用語集(2009)」を編著し、田口博士の思想を広く伝えている。
3) 周囲(所属組織内外)への貢献
日本規格協会「標準化と品質管理」誌で、2014~2020年の間に2件の連載(計17回)と3件の解説を掲載し、品質工学会外への発信も行っている。
4) 普及(基盤作り)の体制構築と活動
新電元工業在籍時に新電元工業の全事業の開発設計部門や顧客企業に対し品質工学技術指導を行った。
また、日本規格協会品質工学研究グループ(QRG)の幹事長(2008~)、品質工学フォーラム埼玉の幹事(2009~2011)および顧問(2012~2022)も務めている。
お問合せ
品質工学会日本規格協会理事長賞に関するお問い合わせは,品質工学会事務局までお願いします。
品質工学会事務局 金野(こんの)
授賞・褒賞